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ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌とはピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で、生物が生息することができない胃の中に入ると、自らウレアーゼという酵素を出して、胃内にある尿素を使ってアンモニアを作り、胃酸を中和するバリアを自分の周辺に張って胃内に棲みつきます。アンモニアの毒素と、バリアによる粘液機能の低下によって周辺の胃粘膜が慢性的炎症を起こし、傷つきやすくなります。それによって胃潰瘍、胃がんなどの発症リスクは大きく上昇してしまいます。
とくに胃がんの原因として知られており、日本の胃がんは9割以上がピロリ菌を原因としておいるという報告があり、また世界でも世界保健機関の報告でも全世界の胃がんの8割はピロリ菌を原因とするとされています。
近年先進国では飲料水の衛生環境が整ってきたことから、ピロリ菌感染率は低下してきています

除菌治療

ピロリ菌感染検査で陽性となった場合は、ピロリ菌の除菌治療を行います。除菌治療は2種類の抗生剤と1種類の胃酸を抑える薬がセットになった除菌キットを使い、1日朝晩の2回、各1錠ずつの服用を1週間続けるだけです。服用が終わって8週間程度で除菌判定を行い、成功していれば治療完了です。1回目の治療で除菌に成功しなかった場合、抗生剤の1種類を他のものに変更してまた1週間の除菌治療を行い、8週間ほどで除菌判定を行います。
近年は胃酸を抑える薬として新しい作用メカニズムのものが登場し、この薬(タケキャブ)を使用することにより、除菌の成功率がだいぶ高まってきました。タケキャブを使った治療の場合、1回目で90%程度、1、2回目合計で99%の成功率を誇るとされています。
ピロリ菌の感染検査は、内視鏡検査の結果慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった症状がある場合健康保険適用となり、除菌治療も保険適用で行うことができます。なお、除菌治療の保険適用は2回目までで、3回目以降は自由診療となります。

ピロリ菌感染検査

ピロリ菌の感染検査には、胃カメラ検査の際に組織を採取して行う検査と、胃カメラを使わない検査に分けることができます。ピロリ菌感染検査を健康保険適用で行うためには、胃カメラ検査によって慢性胃炎以上の胃の疾患があることの確定診断を得られた場合に限ります。

胃カメラ検査時に行う感染検査

胃の粘膜組織を採取して、ピロリ菌感染の有無を様々な方法で調べるものです。

当院の胃カメラ検査について

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌がアンモニアを作るためにウレアーゼという酵素を分泌します。採取した組織がウレアーゼによるアンモニアによってアルカリ性を呈した場合陽性となります。

鏡検法

採取した組織の中にピロリ菌がいるかどうかを、顕微鏡を使って観察する方法です。

培養法、薬剤感受性試験

採取した組織を培地に入れて培養した上でピロリ菌の存在を確認します。菌株の種類、抗菌薬耐性なども調べることができ、菌株の保存も可能です。

胃カメラ検査以外で行う検査

尿素呼気試験(UBT)

ピロリ菌がウレアーゼを使って尿素を分解するとアンモニアと二酸化炭素になります。この性質を利用し、尿素中の二酸化炭素を自然界に存在する炭素(C12)をほとんど自然界に存在しない同意炭素(C13)に置き換えた試薬を服用してもらい、試薬服用前の呼気と服用後の呼気に含まれる炭素の量を計測し、服用後の呼気にC13が多く含まれていれば陽性となります。
除菌判定の際などによく使われる方法です。

抗体測定法

血液、尿、唾液などを採取し、検体に含まれる抗体を測定して感染の有無を調べます。

便中抗原測定法

検便検査で採取した便中にピロリ菌の抗原が含まれるかどうかを調べる方法です。

ピロリ菌感染検査の健康保険適用

ピロリ菌感染検査が健康保険適用になるためには、胃カメラ検査を受けて、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの確定診断を得たケースと、胃カメラ検査中に採取した組織からピロリ菌感染がわかった場合となります。

半年以内に人間ドックなどで胃カメラ検査を受けた方へ

半年以内に当院、または他院で胃カメラ検査を受け、慢性胃炎以上の疾患の確定診断を受けている方は健康保険適用でピロリ菌感染検査を受診することができ、ピロリ菌感染が陽性であった場合、除菌治療も健康保険適用で行うことができます。

自費診療となるピロリ菌検査・除菌治療

健康保険適用でピロリ菌感染検査・除菌治療を行うことができるのは、半年以内に胃カメラ検査を行い、最低でも慢性胃炎の確定診断を得た方のみです。胃カメラ検査を受けない場合のピロリ菌感染検査、除菌治療は自由診療となります。
さらに除菌治療で使うことのできる抗生物質はクラリスロマイシンとサワシリンの2種類に決められています。ペニシリンアレルギーがあって他の抗生剤を使った場合などは健康保険が適用されません。ただし自由診療であれば別の薬も使用できますので、ご相談ください。
また、除菌治療に健康保険が適用されるのは2回目の治療までです。3回目以降は自由診療となります。

除菌治療の流れ

ピロリ菌感染検査で陽性となった場合、除菌治療を行います。

1薬剤の服用

ピロリ菌除菌キットとして、2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制剤(PPI)」をそれぞれ1錠ずつ朝晩2回の服用を1週間続けます。

起こる可能性のある副作用

  • 味覚異常(約30%の確率)
  • 下痢(約13%の確率)
  • 蕁麻疹(約5%の確率)
  • 肝機能障害(約3%の確率)

これらの症状があらわれた場合、すぐに当院までご連絡をお願いします。
また、蕁麻疹や皮膚の発赤、息苦しさ、呼吸困難等のアレルギー症状が起こった場合にはただちに服用を中止して当院までご連絡ください。

2除菌判定

服用完了後最低8週間をおくと、除菌判定が可能になります。ご来院いただき除菌判定試験を行います。尿素呼気試験または便中抗原測定法による判定が一般的です。
除菌判定の結果成功の場合は治療完了です。失敗の場合は2回目の除菌治療に入ります。

32回目の除菌治療

除菌失敗の原因のほとんどは耐性菌によるものです。2種類の抗生剤のうちクラリスロマイシンをメトロニダゾールに替えて再度同様の除菌治療を行います。

42回目の除菌判定

服薬終了から8週間で除菌判定を行うことができます。1回目と2回目を合わせた除菌成功率は約97~98%でしたが、近年登場した新しい胃酸抑制剤タケギャブによって除菌成功率は高まり、1回目で90%、2回目を合わせると99%が除菌成功となります。
ここでも除菌に失敗した場合、自由診療となりますが、中には5回目で成功した例などもありますので、ご希望があれば治療を続けることが可能です。